展示の他に、大蔵流狂言方 山本東次郎氏の講演もあるというので
興味津々で出かけました

小規模な博物館ですので展示品の数は少なく感じましたが
装束の斬新なデザインや色には
ただただ感心するばかり
中でも遊び心いっぱいの「肩衣」と「冠」が見ていて楽しい

展示品は撮影不可でしたが絵はかまわないとのことでしたので
「作り物の冠」を描きました
 
柚子と栗だと思うのですが
どのような演目でこのようなお茶目な(笑)冠をつけるのか・・・。

講演ではどんなお話が聞けるのかまったく想像していなかったのですが
まずご紹介の間の山本東次郎氏の眼差しを見ただけで
何か違うものを感じ
来て良かった気持ちで一杯になりました

お話だけでなくな・な・な・なんと後半では
「女方・鬼・大名」の三種の着付けを
目の前でやってくださったんです
長襦袢姿の股あたりをちらりとめくって「あら失礼」なんて言いながらの
着つけですからワクワクし通しでした
(お茶目な眼差しもお持ちの方で・・・)
あの着物とは違い布をくるくると巻いて作る襟には
ホント驚きました

衣装の文様やデザインのお話の中で
作りなおすにしても昔のものを写すしかない現状に
現代は「1つのものを見つめる」ということが足りないという言葉があり
いま残され受け継がれているものに重みを感じました

一つのものを見つめ、遊び心を持ってデザインし、丁寧な仕事で仕上げる
ちょっと悔しいけど「かないっこないなぁ〜」
これからの私の印づくりの信念にしたい様なお言葉です

これは「昔のものはデザインも色もいいでしょう」と
見せていただいたもの


素人目にも違いが分かる
さらにこれは刺繍でなく織りこんであると聞き
もう参りましたでございます
触らせてもいただきましたが
お話通り引っかかりもなく
ツルツルなんです


「身を飾る衣装」でなく「格をもって着る装束」
というお話しもあり
なんだか全体の見方も少し変わったように思います



あのお茶目な「作り物の冠」ですが
能・狂言の敷居を低くしてくださった「春霞庵」の庵主様より
さっそくお返事いただきましたので
皆様にもご紹介させていただきます

「菓争(このみあらそい)」という狂言で使うものなんですよ。
橘の精一族が花見をしていると、その山に住まい致す栗の精が
「オレに無断で山にはいるとはけしからん」といちゃもんをつ
けにくるのですが、逆に、寄ってたかってボコボコにされてしまいます
怒った栗は「今に見てろよ」とばかり、今度は自分の仲間を連れて再び襲来
ここで木の実たちの合戦がはじまるのですが
折から吹いてきた季節はずれの冷たい突風に吹き飛
ばされて、みんなちりぢりになってしまったのでした
たしか
橘さんチーム:橘・蜜柑・金柑・ボンタン・柚子
栗さんチーム:栗・梨・桃・棗・梅
という布陣でした(笑)

まさに遊び心がいっぱいで
ますます興味が湧いてしまいました


1999/11/6 SPECIAL THANKS RINKOSAN