其の七 「ホッコリ」の巻

          

  ほっと一息つきたくなった
  ゆっくり座りたいけど、喫茶店という気分ではないと旅本を開く
  建物そのものが作品の記念館
  「土と炎の詩人」と称された陶芸家河井寛次郎自身が設計した自宅兼工房
  全くしらない人だけれど、なんだか行ってみたくなった
  焼き物はいろいろあるので私の好みであると嬉しいなぁ〜
  ついでにほっこり休める処だといいなぁ〜と
  道中、初めての電車に乗り五条駅へ

  住宅街を行くと記念館が見えた
  引き戸をカラカラと開け中に入る「静まり返っている」
  入って直ぐは「あっいいなここ」と、ほっと安心していたのだけれど
  チクタクと時計の音だけが響き
  正に私の好みである焼き物が目に飛び込み
  吹抜けで思ったよりも広く奥へと続いている様子に
  たちまち落ち着かなくなった【良すぎる】
  ドキドキしながら愛用品・スケッチ・作品を見ながら奥へとすすむ
  真中あたり「ろくろのある陶房」は上の登り窯〜自宅〜中庭を一望できる
  ここで何かが下りてきてしまったのか、涙が出できてしまった
  うぅぅぅぅぅぅぅぅぅーーーーっ本当にいいのだ
  でも、それからはいつもの調子で蟹歩きで登り窯に入ってみたりしている私

  二階へ行き書斎の椅子に座るとお尻に根っこが生えた【帰りたくない】
  入り口にある大きな机にはいろいろな方の画集や写真集などがあり
  それらを見ながら「ホッコリ」していたら日が暮れてきた

  それぞれの部屋に電灯がともり、見納めの様にもう一度歩く
  もうすぐ閉館時間、宿のお母さんの顔も浮かんできた
  「今日のご飯はなんだろう」
  また必ずと後ろ髪を引かれながら帰ることに
  雰囲気は伝わりきっていないのだけれどポスターを買った
  部屋とここがつながる様に