4/4 高橋源一郎「あ・だ・る・と」退屈は文学かの巻


マサ子:本屋で見つけてあー1500円高いな、でも文庫になるのはまだ先なんだろうな、つーかなるのかな、買おうかな、買っていいのかな、なんか素直にかわいく暮らしてるはずなのにどんどん貧乏になっていくなあみんな政府が悪いんやだれか所ジョージを総理大臣にせえそしたらもう収拾つかなくなるぞテメーバーロイ、と思いながら買ってきました、高橋源一郎「あ・だ・る・と」。ところでアッシ、源ちゃんが週間女性に連載してたなんてこと知りませんでした。なんか耳かすったような覚えはあるけれど。ファン失格ですね。

サブ子:他の作家さんなら知っているとでも言いたいのかい。馬鹿。なにはともあれ、カバーイラストがやまだないとってのがイカス。あのイマージュクラブの編集者(女性)に「こういうのを読んでる女が高校生の男の子買っちゃったりするんですよねえ」と言われたやまだないとです。さてその内容はといえば。

マサ子:第一章「人妻図鑑」、第二章「女尻の皺」、つまりAVの話ですね。AV監督が出てきてあのビデオのときはこうだった、あの女優はこうだった、あの男優はモンゴルでは三船敏郎より有名なのかもしれないウンコってば本当に臭い、顔射専門の男優がいる、などなどフィクションなのかノンフィクションなのかは知らんが実に食欲がなくなるお話が延々と続き、スゴイと思うのはこれだけのべつまくなしひっきりなしにセックス、セックス、セックスしてるのに最初20ページくらい読んで「なんじゃこりゃーっ」って叫びそうになったほど見事に退屈だということ。

サブ子:これがいわゆる「管理社会のイメージの中に徹底的に入り込む」ということなのか、「極度に人工的な世界を単純な声で語る」ということなのか、どっちも違うと思うが、そういえば群像とかでよく見るような文章だと思うし、で、退屈なんだが、二章150ページにわたってやられると非常に気持ちいい。わかるか?わかるね。気持ちいいんです。ありがとおおおーって感じで。このまんま最後まで行ってくれれば、なんつーか、なにがしかの達成感を得られて読み終わることができたんだと思う。だがしかし。

マサ子:第三章「恋愛というお仕事」、そういう企画で73歳のササキタヅさんとやらされるはめになった男優のお話。この辺から…だから後半から、なんか、あれ、おっかしいぞー、という感じになります。なにがおかしいのかって、退屈じゃあなくなっちゃうんですね。退屈じゃないからつまんないってのも変だけど。いや退屈じゃないって言い方は違って、この辺からじわりじわりとボルテージが上がってきてしまったというか、ある種の作品成立―!みたいな、終わらせるための準備が始まってしまったというか、そんな気がします。

サブ子:つまり我々(作者)好みの、いかんともしがたい、「たいしたことはないけれど、体動かなくて」のような雰囲気がなくなってしまったということで。エピローグ「ソドムの同窓会」まで行きますと、「アダルトビデオってのはソドムの同窓会じゃなきゃいけへんのや」と終わってしまってなんか島田君の「愛の共産主義だよ」に匹敵するというかまああんまり他の知らないからなんですけどそういうのが頭に浮かんでしまったということです。

マサ子:どうなんでしょうねえ…全部ワザとだとは思うんすけど。まだ読んだばっかりだからあと二週間くらい経ったらなんて言うかは自分でも予測がつかないが、とりあえず今言えるのは「優雅で感傷的な日本野球」が一番好みでしたー、とか。

サブ子:いや「文学がこんなにわかっていいかしら」が(笑)。

 


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