青山二郎 面白い話をしましょうか。小林という野郎はゴッホになったつもりで宿屋にいるのですよ、僕は鉄斎になったつもりで鉄斎のことを書いているでしょう?その晩に飲み始めると向こうはゴッホでいっぱいになっているし、こっちは鉄斎でいっぱいになっている。ゴッホと鉄斎の喧嘩みたいになっちゃうんです。そうすると、ゴッホがね、お前みたいな野郎が文士面をしやがって、宿屋に来てカンヅメなんかになりやがってと、女中だの宿屋の親父の前で言うのですよ。俺ははずかしくてお湯にも行けやしない、毎晩こういう話をする。どこへ行っても、こうなんだ、方々へ一緒にいっていますからね。
小林秀雄 今に青春の思い出になるよ・・・。