バフチン小説の言葉




 「小説の言葉」とは、小説の文体についての言葉である。しかしこの論文で狙うのは小説の文体というものにとどまらず、これを通じて言語芸術全般について考え直すことである。またそれだけ小説の文体というのは、言語芸術全般に通じるテーマをもっている。 一般に研究者のあいだでは、文体というのは作者個人や文学流派が持つものだと了解され、社会的な背景を見ないことがある。  あるいは、その文体というものを見る研究者の目は些細なことにこだわりがちだ。木を見て森を見ないような現在の研究にバフチンは不満を持つ。 より総合的な検討が必要だ。