中村真一郎の文章読本とバフチン


 男達の見果てぬ夢、それは文体論である。中村真一郎も例にもれない。中村真一郎は私たちにわかりやすい形で、総合的な文体論を語ろうとしてくれる。そのさいに頼りになる言葉が「言文一致」である。二葉亭、森鴎外などの多様な実験を5〜10行程度で示してくれ、絵画にたとえるならば印象派的な省略を持った白樺派などの紹介、そしてやがてやってくる佐藤春夫の文体論的頂点におく。ほぼ入り口は詩の入り口から中村真一郎は文体について語るが、とても分かりやすく、日本の純文学に関してはほとんどこれで良いのではないかという錯覚に陥る。つまり日本人は小説については「言文一致」くらいしかやってこなかったのではないか。「言文一致」とは何かと言うと、和田君の言葉を借りれば「綴り方」である。