小林多喜二座談会〔その3〕1998.11.21 深夜

●映画の要素

でね、そうしたときにね、文体はともかくとして、映画みたいな場面があるわけですよ。カフカも映画みたいな場面があるわけですよ
長谷川 うん(笑)
で、チャップリンが出てきて、俺はいい具合だと思ったのね。それは、まあアメリカみたいなもんだよと思ってね
長谷川 うん、それはたぶん、チャップリンがアメリカじゃなかったんだよ(笑)
で、多喜二にもそういう場面があるからね。そういう場面を共有していると、これは文体とは違う。ありていに言えばネタみたいなもんなんだけどね。そういうものと、横光みたいな人が持ってるネタとね、非常に近い
長谷川 うん、そうね。映画が出来てからの小説の作り方は明かに違うね。しかも、それはもう世界的にそうだと思うね
そうなの、そうなの。全然違う
junius ウルフがちゃんと論じてるよ(笑)
長谷川 そうだろうね(笑)>ウルフ
いや、だからそれは聞きたいんだよ>小林
長谷川 なんて言ってる?
マッカラーズの話聞いてもね、俺が思うのは映画のことで・・それは聞きたい
junius モンタージュ手法とかね、ああいうことを取り上げてたと思う

●多喜二の<身体感覚>

長谷川 自分からはずしといて何だが、これでいいのか、多喜二は(笑)
junius いや、私の中じゃ繋がってるんだけど(笑)。で、いろいろ発見があるんだが(笑)
長谷川 おう(笑)
もうちょっと続けてみると、もっとわかるはずだ>多喜二
長谷川 おう(笑)>岡
奈良 うん。いつもそうでしかないっていうのが貧困なわたしだが(笑)
junius 3・15は誰か読んでる? 第一次共産党事件を書いたやつ。代表作で(笑)中編なんだが(笑)。飴玉もそこから派生してるんだっけね。3・15に関して言われることが多いのが、そこに出て来る身体感覚の描写の話なんでさっき
の話に繋がるかなと思ったんだが(笑)。まあ、後日かな
長谷川 何だ、続きはないのか?(笑)
junius いや、私がいまいち実感できないところで、今日のRTで発見したところなんで言葉を捜している(笑)
拷問の描写なんだけどね、具体的に言うと。それが読んでいてこっちまで痛い、という風に例えば小田切さんなんかは言うわけよ。それに井上ひさしだの小森陽一だのが賛成するんだが(例のすばるの対談だ)、うーん、私は読んでいて、自分が痛いとは思えなかったのね。
それより、そこに出て来る、拷問を受ける人間がほとんどもの扱いって感じの方が強くて。別に官憲撲滅! とか思ってるからってわけじゃなくてね、最初からそうなのよねえ。
junius 多喜二の拷問シーン、3行くらいアップしてみていい? 具体的にどうなのか。知りたい。
それはいいね、アップしてくれ
junius 渡は、だが、今度のにはこたえた。それは畳屋の使う太い針を身体に刺す。一
    刺しされる度に、彼は強烈な電気に触れたように、自分の身体が句読点くらい
    にギュンと瞬間縮まる、と思った。彼は吊るされている身体をくねらし、くね
    らし、口をギュッとくいしばり、大声で叫んだ。
    「殺せ、殺せ――え、殺せ――え!!」
    それは竹刀、平手、鉄棒、細引でなぐられるよりひどく堪えた。
長谷川 ま、痛いのは痛いね、やっぱり(笑)
junius ここだけ読むとね>せんせ
ここだけ読むとね>せんせ
長谷川 針はいかんよ(笑)
小林秀雄とかね
junius でも、句読点とか言うんだぜ?(笑)
小林秀雄だよ(笑)、なんか、洒落てる(笑)
junius 人間を介したモノ、みたいな印象があるんだけど
奈良 どこに刺してるのかな
junius あっちこっち>奈良 胴体が主らしいですけど
長谷川 電気が入ってるからじゃないのかね?
junius いや、単なる針らしい(笑)>せんせ
長谷川 いや、そうじゃなくて、身体=電導体ってことだけどね(笑)
奈良 え。急所というのは? 気絶しない場所とか? すっげえいたくてしかも気絶しないところって残忍だよね
junius 気絶すると水ぶっかけて目醒まさせるんだって>奈良
奈良 すごいな
あ。やっぱり?>junius
junius うん。多喜二にもいっぱい出て来る。↑で刺されてた渡くんは、3回このあと水ぶっかけられる

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