日記 - 2001年7月


2001-07-02

Mozilla 0.9.2

速度がかなり早くなって大変快適に使えるようになった。最近気にな るのはキャッシュの中身がページの後に引っ付いてゴミが表示される バグかな。 これ だな。

2001-07-06

ベンヤミン

ゲーテの「親和力」が面白かったので親和力論を読もうと思って筑摩 文庫のベンヤミン・コレクションを買ってきたという話を書いたのは だいぶ前のことだが、親和力論とかバロック論はいまいちピンと来な かったので、「ボードレールにおけるいくつかのモチーフについて」 というのを読んだら、フロイトやベルグソンやヴァレリーやプルース トを引用して記憶と想起の対比を行う所などが非常に興味深い。

それで解説本をということで、現代思想の冒険者たちのベンヤミンの 巻を買ってくる。本題とは関係ないが面白かった所を引用。

知的にも政治的にも後進国であったドイツで、マルクス主義にも、ラ ディカルなデモクラシーにも無縁な上層の若者たちが何らかの革新を 求めたときには、こうした、熱っぽいだけの混沌しか道がなかったの だろう。だが、逆にそれが、二十世紀の政治地図とは違う可能性をベ ンヤミンに追求させるきっかけになったのだから思想というのはわか らない。菜食主義運動、新型靴運動、新石鹸運動、反アルコール運動、 全裸日光浴運動、男女混合日光浴運動、芸術化コロニー運動、ヘッセ やミューザムも関係したアスコナの新コミューン運動、また都市では 自由舞台運動や生活協同組合運動、およそありとあらゆる脱出の運動 が、相当怪しげなものも含めてうごめいていた。

加藤

夜中に加藤くんが酒を飲ませろといって押しかけてくる。ビールを飲 ませてお引取り願おうかと思ったがもっと飲ませろというのでコンビ ニに行ってビールを買ってくる。それでフジロックに行こうという話 で米井さんも誘おうといって電話したが、何か懸賞でタイ旅行が当たっ たのでその頃はタイに行っているらしい。さらに酒を飲んで、加藤く んが女子大生に電話をしているのを代わって適当に下ネタを浴びせて しまったが、最近自分のセクハラおやじ度が急上昇しているので是非 とも改善したいと思っているが全く改善される兆しが見えないのが情 けない。

2001-07-07

成田、渋谷

イギリスへ旅立つ岡くんを見送りに成田空港へ行く。空港内のライオ ンでビールを飲みながら時間をつぶし、チェックインしているのを待っ ていたら呆然とした表情で岡くんが戻ってきて、乗り継ぎをする香港 が台風のため出発は延期になったらしい。そんな波乱の旅の始まりを 迎えた岡くんと分かれてルケーチのライブを見るために渋谷へ行く。 加藤くんと女子大生を誘っていたので待ち合わせをしていたのだが、 成田を出るのが遅くなったのでライブに間に合わなくて、二人と合流 してから急ぎ足でラブホテル街を歩いている途中で、女子大生に「疲 れた? 休憩でもしようか」とか言ってしまい、セクハラおやじ度が より悪化していてどうにもならない。

ライブ会場へ向かうエレベーターの中でとみねこがコキリコ節を歌う のが聞こえてきて、会場についたときはもう最後の曲だった。力の抜 けたいい感じの演奏で、最初から見れなかったのが非常に残念だった。 ライブ後の飲み会ではとみねこが暴発していてセックスとか叫んでい て非常に面白かったが、つられて自分のセクハラ度も上がっていくの を海より深く反省しつつ、鹿島くんに連れられておりょうちゃんの家 に行って寝ていたら明け方に岡さんから電話がかかってきて寝ぼけな がら受け答えをしていたら、おりょうちゃんとじゃみちゃんがあれが 寝言だったら怖いねとか言っていて非常に恥ずかしかった。

2001-07-12

日記

7月10日

ペンギンでねこねこのライブ。対バンのいしのだなつよさんという人 は高校生の頃からペンギンでライブをやっていて今はオールナイト・ ニッポンをやっていたりして有名人らしく、客がいっぱい入っていて 中に入れず入り口から眺めていた。ねこねこのライブは特別ゲストと かいって出てきたポポロンが非常に笑えた。岡さんが自分が歌う時で はなくて伴奏で弾くピアノは何か凄くて、出てる音の量が普通の人よ りいっぱいあるような感じがする。

7月11日

この前直さんの家で飲んだくれているときにポポロンからチケットを 買ったので、フミアキくんが主催のライブイベントへ行く。なんと言 うか所謂オタクの人たちの集まりという感じだったが、東浩紀がどっ かでオタクの保守性ということを言っていて、要するに無批判に受容 したものを意識的に、しかも組織的に再生産してしまうというところ はあると思う。ポポロンとかポポロンというかまんちゃらさんの後輩 の名前は忘れたけどこの前話していて私は勃ってるちんこしか見たこ とないから仮性包茎というのはよく解らないとか言っていた人、とい うのもひどい覚え方だが、その人とかだとそういうオタクの文脈では なくて普通の感じの音楽をやっている感じがした。

ベンヤミン

最近はめっきりベンヤミンにはまっている感じで、ベンヤミン・コレ クションの二巻を買ってくる。「プルーストのイメージについて」で はプルーストと交流のあったクレルモン=トネール公爵夫人という人 との間であった話を紹介していて、この話はかなりしびれるものがあ る。

夜遅く、彼はクレルモン=トネール公爵夫人のところに姿を見せる。 家から薬を取ってきてもらえるならしばらくお邪魔しましょう、とい うのだ。さて召使を送り出すときになって、プルーストは彼に自宅の 界隈と建物を長々と説明する。最後に「分からないはずはありません よ。オスマン大通りでまだ明かりがついている窓は一つしかありませ んから」。しかし家屋番号だけは教えない。

やっぱり小説を書くような人は性格が悪くないとね。

それからベンヤミンがベルン大学に提出した博士論文の「ドイツ・ロ マン主義における芸術批評の概念」というのを読みたいのだが、これ はベンヤミン・コレクションには入ってないみたいなのでどこかで探 してこないといけない。

2001-07-16

ベンヤミンのプルースト

「ボードレールにおけるいくつかのモティーフについて」で記憶と追 想の機能についてライクという精神分析家からこういう引用をしてい る。

記憶の機能は印象の保護にある。追想は印象の分解を目指す。記憶は その本質からして保存的であり、追想は破壊的である

これについて「プルーストのイメージについて」では「ペーネロペイ アの仕事」という言い方をしていて、ペーネロペイアというのはホメ ロスの「オデュッセウス」で夫の不在中、多くの求婚者に迫られたた め夫の棺衣を織り終わるまでは求婚には応じないと言って、昼間はそ れを織り、夜は解いて過ごした人物で、この織物を織るのが記憶、そ して解くのが追想ということになる。また古代ローマでは織物のこと をテクストと呼んでいて、プルーストにおいてはテクストを編むこと はテクストを解くことへと転倒している、つまりペーネロペイアの昼 の仕事と夜の仕事の逆転がここにある。

この構築と解体の対比は「ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概 念」において小説と批評の対比として用いられる。小説はそれ自体で は詩の韻律のような外部からの形式化を受けることがないために、そ れぞれの作品において自分自身で形式を構築することが要求される。 この形式化の要求により小説はその内部において反省の作業を強いら れ、この依拠する外部を持たない状態の中での反省の徹底が飛躍をも たらしてその飛躍によって作品の内容をなす。このような作品に対し て批評はその形式を解体していくことによって作品の純粋な内容を取 り出し、その作品を完成させる。

2001-07-23

最近の小説

最近本になった小説をいくつか買ってきた。

高橋源一郎の「日本文学盛衰史」の明治時代の文学者達の伝記と現代 の風俗、援助交際とかアダルト・ビデオとかが混線しつつ進む話は、 「ゴーストバスターズ」でランボーと松尾芭蕉がアビシニアで俳句合 戦をする場面のような緊張感はなくて、「露骨なる描写」を実現した いという田山花袋に向かってアダルト・ビデオの監督が黙ってデジカ ム持ってまんこを撮れと恫喝する場面のように、何かを喪失するよう な余地もないような散文性に解消されていく。最後にこの小説の登場 人物となった明治時代の文学者達の死亡記事を並べていく章は、その ような散文性を突き詰めた形式の小説におけるクライマックスとして プルーストを思い出させるし、そういうふうに文学が絶望的に解消さ れてしまった後では、中村光夫でも読んで元気を出そうという気も起 きない。

中原昌也の「あらゆる場所に花束が…」はあまり何も考えずに読んで いたら特にこれといって読むべき所のない地味な小説という印象を受 けたが、途中で読むのに耐えなくなるということもなかったので、もっ と真面目に読めばなんか面白い所でもあるのかも知れない。

福永信の「アクロバット前夜」はただ単に横書きなだけかと思ったら 一行目を最後のページまで読んで次に二行目を読むという仕組みで、 要するに html で <nobr> タグを付けて改行しないのと同じ状 態になっていて、こんなもん読めるか、もっと真面目にやれと思った。 多分そのうち暇になったら読むけど。

2001-07-31

七月後半の出来事

7月19日

アークヒルズのレストランでフランス料理をどっさり食べる。ワイン もどっさり飲む。その後何故か高田馬場の居酒屋で二次会。

7月20日

岡さんとみちるさんが 横浜で歌の教室の発表会のゲストに出るというのを見に行く。横浜は 花火大会をやっているらしくて、浴衣を来た人たちで溢れていたのと、 その歌の発表会をやる所が映画館のあるビルで、そこは「千と千尋の 神隠し」の公開初日で大行列が出来ていた。終わった後で皆で同じビ ルの中のイタリアレストランに行ったら岡さんが頼まれもしないのに 店においてあるピアノを弾いてみちるさんが歌を歌って即席コンサー トをしていたのが面白かった。

7月21日

ユーノスケくんの芝居を見に阿佐ヶ谷へ行く。凝った演出で演技も上 手で演劇などというのは殆ど見たことないが立派なものだと思った。 杏ちゃんという役をやっていた人が大変可愛かったので、終わった後 に飲み会に行くという話をしている時に杏ちゃんも連れてきてと言っ たら富山さんにばーかとか言って怒られた。

それで竹内さんとかと飲みに行って勢い込んで飲んでいたら思いっき り酔っ払い、気がついたら東長崎の住宅街を裸足で歩いていて、アス ファルトが足の裏にちくちくして気持ちがよかった。

7月25日

富山さんのライブを見に行って今回はヴァイオリンとかパーカッショ ンとかシタールとかを入れてやっていて、富山さんはしんみり弾き語 りをするのが結構いい感じなので、そういうしんみり感が味わえなかっ たの残念という気もするがそれはそれで面白かった。その後飲んで帰 るときにヴァイオリンの人の家に行くというので調子に乗って付いて 行ったら、家に入って本棚が目に入り、その目もくらむような蔵書に たまげた。個人全集も企画ものの全集も価値のありそうなのが綺麗に 揃っていて古本屋に売れば一財産築けそうな勢いだった。その人は高 校生の時に水球をやっていて大学ではヴァイオリンとライフセービン グをやり、今は主夫で小説を書いているという訳の解らない経歴のい かした人だった。

7月27日

岡さんがライブをやるので見に行く、ってそんなのばっかだな、今週 は。渋谷のアピアっていうライブハウスだったんだが、ここの店員は 出演者に対する態度が非常に悪くて見ていて大変腹が立つ。

7月28日

何故か苗場になってから毎年行っているフジロックに今年も行く。毎 年昼過ぎくらいに着いていたが、今年はナンバーガールが見たかった のでがんばって早起きして十時前には着き、グリーンステージの後の ほうの木陰にレジャーシートを広げて早速ビールでも飲みたい所だが 昨日結構飲んだのであまりそういう気分でもなくおとなしく始まるの を待っているとステージのほうで歓声がするので行ってみた所、メン バーが出てきてセッティングのチェックをしていた。そのままステー ジ前に待機して、曇り気味で暑すぎもせず、去年のように雨が降るこ ともなく絶好のコンディションであるのを満喫していると再びメンバー が登場して演奏が始まる。でっかいステージの中央にぎゅっと集まっ た四人の出してる音の一つ一つ、その動きの一つ一つが一体となって 響いてくる音を、朝一番ということで余り温まってい印象の観客だっ たがそれでも調子に乗って最前列のほうに突っ込んでいこうとすると もみくちゃにされて押し返されるような中で聞いていると興奮して何 だか笑いがこみ上げてくる。途中で向井がビールを持って、それでは 僭越ながらフジロックの開催を祝しまして乾杯三唱を行いたいと思い ます、かんぱーい、かんぱーい、かんぱーい、というようなことを、 やり出して、この乾杯三唱というのは大変気に入ったので機会があれ ば是非やってみたいと思った。関東乾杯三本締めみたな感じで。

その後はグリーンステージの後の方でたこ焼きとか牛串を食べながら ビール飲んだり昼寝をしたりと、とにかくハイネケンの紙コップを積 み上げて過ごし、夕方になって日も傾いてきた頃に散歩に出かける。 ホワイトステージからフィールド・オブ・ヘブンに行く途中の所にあ る食い物屋の奥のほうに色々な活動をしている NGO のテントがあっ て、そこでアニマル・テスト反対みたいな立て看があるのを見た加藤 くんが「アナル・テストって何?」とか聞いてきたので一瞬頭の中が 真っ白になった。

フィールド・オブ・ヘブンで ROVO がやっているのを眺めながら無添 加の煙草の試供品をもらってそれを吸って頭をくらくらさせたり、オー ガニックビールとかいうものを飲んだりする。麻ビールは飲まなかっ たがどんなもんなんだろう。ROVO の次は渋さ知らズでステージ上に は大量のマイクが並んでいていったい何人出てくるんだろうとわくわ くしながら待っているとマイクをチェックする係の人が走り回って次 から次へとマイクにコードを挿していったりしていた。

渋さ知らズについては大人数のジャズバンドということ意外に特に何 も知らなかったが、笙野頼子の「てんたまおや知らズどっぺるげんげ る」というのでズが片仮名なのは多分渋さ知らズから取ったんだなと 後から思ったりして、笙野頼子は渋さ知らズが好きだというのをどっ かに書いていたらしい。しかし渋さ知らズは凄かった。大量のホーン の人達や、褌にはっぴを着てえんやーとっとえんやーとっと言ってる 人や、カウガールの格好で踊ってるダンサーや、白塗りの舞踏の人や、 ドレッドヘアーのギターの人や、でっかい龍のバルーンや、血管が切 れそうな勢いで天城越えを歌う人や、とにかく細かいことを何一つ気 にせずにお祭り騒ぎをするのに絶好のステージで、これをフジロック で見られたのは本当によかった。多分普段の客層とは全然違うオイオ イ叫んでるモッシュ好きの若者達が盛り上がるのも、普通のバンドだ とオイオイ言ってるのは正直言って邪魔くさいんだが、そんなことは 全然気にならなくてすっかり溶け込んで盛り上がった。それにしても このダンサーの人 は可愛かったなあ。

最後はニール・ヤングを見て、あんなにギターを弾きまくる人だとは 思わなかったので大いに盛り上がりつつバスに乗って越後湯沢まで行っ てホテルでぐっすり眠った。

7月29日

何をトチ狂ったかこの真夏に鍋をやるとか言い出した加藤くんに付き 合ってうちで鍋をやる。早速乾杯三唱をしてビールを飲む。たえちゃ ん、いつもいつもセクハラなことを言って済みません。おじさんもが んばって生きています。


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