其のニ「テッペン」の巻


私が泊まったのは
格子構えの外観が京都らしい民宿
素朴で家庭的なもてなしに友人の家に
およばれしているような気分で
くつろげるらしい宿

秋のシーズンの最中(さなか)に一人でもいいだなんて
割増もなくこんなに安いだなんて
「きっと何かあるぞ」
と思いつつ長期滞在と絵の描けそうな和室には
代えられません
問い合わせ2件目にしてあっさり予約
きつねにつままれた様な「夏」のことでした

果物屋さんを曲がりその先の小さな医院を曲がると
格子構えの家が点々とする静かな筋
梅の紋の暖簾のかかった宿
あらららら
絵に描きたい感じでニッコリ
荷物を下ろすなり早速とばかりに外へ
蚊と戯れながらのお絵描きに一苦労
夜、部屋で彩色しながらふと考えた
「明日だけは満室なので三階でお願いします」
もしかして、この「テッペン」のことか

「窓を開けると手洗い水あります」
という張り紙が御手洗いにあり
田舎にあった提灯みたいなヤツかと
窓を開けて見まわすが何もない
中庭の窓のことでした
風情あり


『古梅川』中庭にて