小林多喜二座談会〔その2〕1998.11.21 深夜 |
●多喜二と志賀直哉、並びに葉山嘉樹 |
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junius | じゃ、多喜二続けよう(笑)。岡、さっきの話の続きをしてくれ(笑)。 |
岡 | 俺はTAMO2さんの話をもっとききたかった |
junius | また機会作れると思うが>岡 |
岡 |
よし よし、俺は語るよ |
junius | 絵を止めて文学に傾倒しだした18の頃だね>志賀直哉勉強し始めた |
岡 | 絵をやってたのね。どんな絵なんだ? |
junius | それは謎なんだ(笑)。探したけど、みつかんない>岡。水彩だったかな。たしか。 |
奈良 |
葉山さん中野さんとは違うっていうことかな。どっかが juniusさん、岡さんと池山さんよっぱけてるのでは? |
junius |
ふう。しょうがないなあ。 葉山って奈良さん言ったけど、いいとこ突いてるね。まさに。 |
岡 | 葉山ってだれだ?>奈良 |
junius | 葉山嘉樹だよね? |
奈良 | 佐多さんがなくなったって群像にあったからわかったの。それまでぜんぜんしらなかったんだけど。じゃああたしもちゃんと図書館でひとそろい借りて読んでみる |
junius | うんうん。データ屋ってところから、とりあえず葉山で続けてみますわ。日記を読んだんですけど、多喜二は葉山を一種の目標にしていたみたい。 |
奈良 | あ、そうなんだ |
junius | 葉山の「セメント樽の中の手紙」ってのが常に意識にあったようで。それで、ブレイクするしばらく前の日記だが、葉山と志賀直哉の名前が一緒に出て来るところがある。 |
奈良 | 葉山さんはゴーリキー、ドストエフスキー、ってかいてある。多喜二においての志賀のような存在らしい/おお>日記 |
junius | ちょっと長いけど抜き書きしていいですか? |
奈良 | おねがいします |
junius | 「淫売婦」の一巻はどんな意味においても、自分にはグアン! ときた。言葉通りグアン!ときた。(「淫売婦」、は葉山の小説です)この十有八編のどれにもあるひとつの態度――意識、これが自分らの中にはないものだ。勿論、自分たちの生活と葉山氏の生活の差異であることはいうまでもないことだ。芸術は生活を離れて存在しないからだ。(略)悲惨な事実を描くだけでは自然主義とプロレタリア文学はちがっていないかもしれない。が、主人公の意識――作家の態度、意識がこの二つではまるっきり異なっている。それからもう一つは「表現」である。新しい酒は「絶対に」新しい嚢にもらなければならない。 |
奈良 | ドストエフスキーだなあ |
junius |
日本の女が洋服を着たような不格好が、でもないとうまれてくるはずだ。この作者の表現様式――技巧は前述の意識を表現するにもっとも適切である。線が粗い。自由な清新な比喩(これが特に著しい)。そして大胆である。空騒ぎにそれでいてなっていない。志賀直哉氏あたりの表現様式と正に対蹠的にある。志賀直哉のばかりが絶対な表現ではない。この二つの重大な要素が、自分を打った。そしてこの重大な要素こそは群小作家、老大家のありきたりの、気の抜けた、一度も二度も書き旧されたものの引き延ばし的なものの間に、「鮮明」にその特質を要求した由縁である。存在理由だ。(●年月日後で入れる) 以上。 |
奈良 | いやあおもしろいよう。空騒ぎかあ。理由はないがなんか新鮮だ。なんかさあ、短いけどちゃんとした批評だねえ。そういうにおいがする |
junius | これ日記なんだよ(笑)。 |
奈良 | ああそうだったよね(笑)>日記 |
岡 |
なるほど 葉山を読んでいないからわからない。しかし、対極にある、ということは分かった |
junius | 私もここで触れられてるのは読んでないよ>葉山の |
奈良 | あたしも。この文章のほうに感心する |
junius | 志賀から出発して、この辺で突き抜けたって感じなのかね。 |
岡 | なるほど |
奈良 | 技術のことがかかれてるよね |
junius | 岡の言う技術というのはもっと違うのかな |
岡 |
いや、近い>技術 安岡章太郎がね、志賀直哉を論じようとしたときね、文体論で行こうとしたんだよ。でもできなかったっていうんだね |
奈良 | それは島尾さんの評論みたいに? |
岡 | いや、よくわかんないんだけどね。それで、安岡さんは、大正デモクラシーについて考えた。で、日本で文体論てのは無理だ、って言う結論に達した |
長谷川 | それは安岡章太郎が志賀直哉になってたからだよ(笑)いや、余計なところにはさんだみたいだ、続けて続けて(笑) |
奈良 | 安岡さんの佐多さんがらみの随筆よんだけど、ある感慨をいだいたよ(笑) |
岡 | いや、長谷川さん、後つづけて(笑) |
長谷川 | いやね、安岡章太郎とかあのあたりの人は志賀直哉の文章をそのまま原稿用紙に写すとかしてるんだよ(笑)。技術を知として考えるんではなくて、体で覚えるわけだ(笑) |
junius | 今生きてる文壇の長老みたいな人たちは、みんなやったらしいね>写す |
長谷川 | そうね、阿川弘之もやってるね |
junius | そう、あの世代 |
奈良 |
歌う感覚だね 音楽って他手ないとおもいませんか?>juniusさん |
junius | そうだね。身体で覚えるというと、文字媒体以外のものに置き換えるとすぐわかるね>奈良 |