吉田さんのこと(2)

いつだったか中村さんが吉田さんをつれて吉田さんのおじいさんに明治の話を聞
きに行くことがあってそのときも吉田さんはあいかわらずで中村さんのとってい
るメモなどを見ながらくにゃくにゃとしていたけれども中村さんはそんなことよ
りもおじいさんのする明治話に夢中になってそれどころではなかった。中村さん
というのも変わった人で明治がすきですきでたまらないといったふうで

 吉田さんは中村さんが大のともだちで戦争中に吉田さんが一度東京に戻ってき
たときがあってそのとき驚かせてやろうと思い中村さんの家にいったら中村さん
は吉田さんが軍服だったので脱走してきたのだと早合点して逃走の手配をしよう
とした。戦争といえば吉田さんはその頃のことを思い出しながら中村のおかげで
メチルだとかの人工酒で目をつぶさずにすんだとここでも酒好きを見せながら満
足げだった。

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